ベルカントQ&A  

 

 


更新 2012/08/22

1.ベルカントって何?

2.ベルカント奏法って何?

3.ベルカント奏法を知った時の、具体的なメリットは何ですか?

4.従来の練習法との違いは?

5. その他 (更新中)

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ベルカントQ&A
 

 


  

 

 

1.ベルカントって何?

ちょっと音楽に詳しい人なら「ベルカントって、歌の発声のことじゃないの?」

と思うかもしれませんが、それは狭い意味での認識です。

単に発声の一方法ではなく、西洋音楽全ての根底に内在する、理念のこと。

音楽を一つの言語だとすると、ベルカントはその文法にあたります。

文法無しで外国語が学びにくいのと同様、ベルカントの理念を知らないと、

音楽の学びに限界が出来てしまいます。西洋音楽は私たちにとって外国文化だからです。

 

直訳するとイタリア語で「美しい歌」の意。音楽用語はイタリア語が多いですね。

それは、今現在クラシック、つまり西洋音楽と呼ばれているものの、

作曲法、演奏法、美意識など様式を決定している要素の殆どがイタリア起源だからです。

当時イタリアのやり方がとても理に叶った素晴らしいものだったので、

バッハもモーツァルトもベートーヴェンもイタリアの先生のやり方を見習い、その手法で

自分の音楽を書きました。だから今のクラシックの根底はイタリア起源と言う事も出来ます。

 

実は彼ら大作曲家たちがイタリアから学んだ作曲法や様式のもとになっている美意識が

ベルカントなんです。音楽の背景に存在する、西洋的価値観、徳といった文化的なものの

集大成がベルカント、と伝統的に位置付けられています。

つまり彼らはベルカントの理念で作曲し、今もそれが演奏されている。

シューマンのように「私はベルカントで作曲している」とはっきり書き残した人もいるけど、

西洋ではベルカントは当たり前のことなので、わざわざこんな事を言う人は少ないです。

 

ちなみに、前述の「ベルカント唱法」という狭義の発声法の事でも、日本では「古い時代の発声」とか「ベリズモはベルカントの否定の上に成立」とか思っている人もいるけど、それは一面の認識です。

根底にベルカントという完成されたものがあるからこそ、その上に発展的に新しいものが成立できた、と考えるべきでしょう。

バロックの後に古典時代があり、またその後ロマン派に発展したのと同じ事です。

 

西洋音楽は歴史の積み重ねだから、根底にあるこれだけのものを知らないままでは

一つの文化として体系的な理解が出来ないし、「文法部分」を知らないと演奏も我流になってしまう、

と思いませんか?

 

 

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2.ベルカント奏法って何?

厳密に言うとベルカント奏法と言う言葉は変です。

何故なら、西洋音楽は全てベルカントであるので、あえてそう呼ぶ必要が無いからです。

 

でも、日本では文化的、身体的な差異が壁になっていて、ベルカントの理念が見落とされてきたので、

「ベルカントな弾き方」という考え方がありません。それはしばしば「カンタービレな弾き方」と混同されます。

それに対して西洋人が一般的に言う「ベルカントに弾く」という事はただ単にカンタービレに弾くというだけではなくもっと音楽のあり方に関わる意味で使われます。

なので、日本で一般的に考えられている歌うような弾き方と本来の形を区別する為に、あえて「ベルカント奏法」と言っています。本当は「ベルカントを実現する為の奏法」というべきですが。

 

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3.ベルカント奏法を知った時の、具体的なメリットは何ですか?

色々ありますが、すぐ実感できるのは次の4問でしょうか。

@ 先ず自分本来の音色で弾けるようになります。

声が一人一人違うように、ピアノの音も人によって大きく違います。

鈴のように響く人、太く豊かな安定感のある音の人、細くてキラキラした音の人など、色々になります。

今一般的にやられている音の出し方では、これほどの個人差は出ません。

そして響きが増し、よく澄んだ、鳴りの良い音でフォルテ、ピアノの差もはっきりします。

 

それは、音を自分の息として捉えられるように体の中の回路を作り、笛を吹いたり歌う時に

息がお腹から口へ流れるのと同じように、お腹で支えた力が指へ流れるようにするからです。

コツを知れば誰にでも出来る簡単な事です。

 

A 音の流れが自然になります。

これも、息と同じ原理を演奏に使っているから、息の流れのような、自然な仕上がりになります。

「良い曲想をつけよう」と思って色々練り上げている内に変な歌い回しの癖がついてしまった、なんて経験はありませんか?今一つ自分の考え通りの曲想にならなくて苦労する人もあると思いま

すが、ベルカントという音楽文法を知ることで、そういう失敗にはまる事が無くなります。

 

B 上のレベルの内容を習得するほど、曲の仕上がりが早くなります。

バレリーナや力士はその動作にふさわしい体を作り上げていきます。

ピアノの場合は体の内部ではあるけど、ふさわしい「弾ける回路」を作っていくので、

「弾ける体」になるほど、曲の習得が容易になるのです。同じ練習時間で早く仕上がるなら、一段高いレベルの曲に挑戦しやすいですね。暗譜も早くなります。

 

C テクニックで行き詰まっている人は答えが見つかると思ってください。

ベルカントでは、まるで歌舞伎や能といった伝統芸能のように、口伝で語り伝えられた様々な技がありますから、その中の一つを知るだけでも解決の糸口になります。

さすが伝統の技、人間工学的にも理に叶った練習法が満載で、「どうしたらそれが出来るようになるのか」が全て説明できます。ただ闇雲に練習してかろうじて出来るようになるという、よくある練習法から逃れられます。

 

ベルカント奏法はまず、「自分の言葉として指で音楽をしゃべったり歌ったりする」為に必要な技が自分のものになります。だから、「音楽で伝えたい事」を多く持っている人ほど、その価値を判ってくれます。

外国語を憶えて何かを伝えたい、という欲求のある人の方が目的が無い人よりも外国語の習得が早いのと同じです。

音楽を語るのは、あなた自身です。ベルカントを習得して、自由に表現できるところまで、ぜひ到達してください。

 

 

4.従来の練習法との違いは?

 

生徒さんが何を求めているかで教え方は違いますが、テクニックで行き詰まりを感じ

て訪れる方が多いので、そういう大人の方には次のように勧めています。

西洋音楽は全てベルカントに則って作曲されている為、ベルカントな体以外で演奏すると無理が出るので、上手く弾けない、という事になりやすいです。

 

1.     まず弾く時の体の使い方を、息を使う楽器と同じ回路で音を出せるようにして、次にその曲が求める音色になるよう体全体の力配分から、調整します。

つまり古典は古典の音、ロマン派はロマン派の音、もっと上達するとモーツァルトはモーツァルト、ショパンはショパンの音、と弾き分けることが出来ます。

 

2.     編物に喩えると、その音は糸で、その糸で曲を編むのが譜読みにあたります。

この譜読みもたとえば同じ三拍子でも時代や国によってリズムの流れが違うので、その違いが確実に出せる方法を学びます。

リズム感がその曲にふさわしくなるだけで、グッといい曲に変わって聴こえるのは想像がつくと思います。

 

3.     その上に、曲が求めている表現を楽譜から読み取って、仕上げていきます。

すでに息使いが反映する回路を体の中に作ってしまっていますから、この段階ではまるで、自分の声で歌ったりしゃべっている様な錯覚がするほど、

自分の言葉として音楽を表現する姿勢になっています。息の通った生きた演奏で練習でき、仕上がるほどに曲との一体感が深まります。

また、「しゃべり方」ともいうべき実際の表現法も国や時代別のわかりやすいノウハウをここでは集めています。

 

このように、音、譜読み、表現、と大まかに分けて練習するので、どの部分を補うべきかすぐ解り、合理的に短期で仕上がっていきます。

譜読みの段階から音楽的に、という事が可能なのはレベルの高い人のこと、大抵の人は分けたほうが上達しやすく、問題点もはっきりします。

まるで料理の時、材料を揃えてから仕込んで、味付けと盛り付けは後、というのに似ています。

 

練習の時、一般的な方法と考え方の違いは?

 

色々ありますが、次の3つが特に気になります。

 

1.     よく脱力しなさい、と言われますが、力みすぎて体に害が出るほどの人は別として、表現できる回路が体の中に無い人がむやみに脱力だけを求めると、音楽が死んでしまいます。

「脱力はするものではなく、なるもの」です。正しく体が使えるようになれば、自然にそうなります。その順番を間違えないで下さい。

まず必要な所に必要な力がかかれば、不必要な所は勝手に抜けてくれます。

自転車に乗れるようになった瞬間、スーッと楽になった、あの感じです。

 

2.     歌うように弾きなさい、とも言われますが、歌のイメージは人によって、また国によって違います。

「西洋音楽的に歌うとはどういう事か」がきちんと説明されていないので、多くの場合、自己流の節回しになっています。

浪花節っぽい歌い方の人すらいます。無意識に日本の美意識を歌に持ち込んでいるのです。

西洋の書法で書かれているものは、西洋の奏法で弾くべきですよね。

息の通った音で弾いていれば、曲にそぐわない歌い方をした時、弾きにくくなるのでそれと解ります。

 

3.     「ここはもっと軽やかに」とか「スタッカートはこんな感じで」など、よくレッスンで曲想の指示がありますね。

でも、生徒さんにとって、出来ない事もあります。それは「どうしたらそれが出来るのか」を教えられず、

表面のイメージだけこうしなさい、としか言えないので、「そうしなくてはいけないのは解っているけど、出来ない。やり方が解らない」となってしまうのです。

出来ないと「良く聞きなさい」と言われますが、聞いただけで出来たら苦労は無いですよね。どこをどうしたらそう表現できるのか、説明できる必要があります。

 

 

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豊田ミュージックアカデミー

ピアノ主任   山 田 茉 莉 子